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二話 シグムント王太子殿下とは犬猿の仲?

작가: Tubling
last update 게시일: 2025-05-21 09:30:47

 目の前にシグムントがいる。

 あのゲームでは一番人気で能力もずば抜けて高いチートキャラクター。

 全ての魔法が得意なのに加えて、光の魔法が使えるただ一人の人物。

 でも私がクラウディア先生なのだとしたら、2人は幼馴染でありながら犬猿の仲だったはずよ。どうしてシグムント殿下がクラウディア先生の邸に?

 彼は極度の堅物で、クラウディア先生のようなふしだら(に見える)女性は嫌悪の対象なので、二人は顔を合わせれば嫌味の押収だった。

 今一番会いたくなかったな……中身はクラウディア先生じゃないのに、いつも嫌味を言ってくるシグムント殿下にどうやって立ち向かえばいいの?!

 クラウディア先生なら負けじと言い返す事が出来るのだろうけど……私がそんな事を悶々と考えているとセリーヌが彼に挨拶をし始める。

 

 「王太子殿下、大きな声を出してしまい申し訳ございません!お嬢様が頭痛で倒れられたので――」

 「頭痛?ああ、あそこから落ちたのだから頭を強打しているのは知っている。私は学園の理事長だからな、今日は職員の見舞いに来ただけだ。しかし君は仮にも風魔法の教師なのだから、目覚めたらすぐに癒しの魔法を使えばいいのではないか?」

 そう言えばそうだ。クラウディア先生が得意な魔法は風魔法で、癒しの魔法もあるはず。

 でも中身が私なのでそもそも使い方が分からない。

 転生したばかりで混乱している状態で癒しの魔法を使ってもボロが出そうだし、今は止めた方が良さそう。どうにかして切り抜けないと……。

 

 「王太子殿下、ご心配には及びません。後ほど癒しの魔法を使いますので私は大丈夫です。お引き取りくださっても構いませんから……っ」

 

 殿下にそう言って一人で立ってみたものの、やっぱり無理かも……立った瞬間に頭がグラっとして目が回り、目の前が暗くなっていく――――

 

 「お嬢様!」

 「ロヴェーヌ先生!」

 

 2人の声が遠くに聞こえる…………体が地面に倒れ込もうとしたところで誰かが私を受け止めてくれて、事なきを得たようだった。

 

 「…………っ……いたたっ」

 

 思わず声が漏れてしまったけど、倒れた衝撃で頭がガンガンするだけで、体に痛みはなかった。

 私を支えている力強い腕、これはセリーヌのものではない。

 …………だとすると、殿下?ハッとして見上げるとすぐ近くにシグムント殿下の顔があった。

 私は殿下に覆いかぶさるような形で倒れ込んでいて、そんな私を彼は支えてくれていたのだった。すぐに立ち上がろうとすると、むにゅっと何かに胸とお尻を鷲掴みにされている感覚がして、あちこちに目線を移してみる。

 すると、シグムント殿下の両手が私の胸とお尻をしっかりと掴んで支えている事に気付いてしまう。顔にはどんどん熱が集まってきて、羞恥心でいっぱいになっていく。

 これは、どうしたら……。

 

 「……大丈夫か?」

 「え、あの……殿下…………手が………………」

 「手?…………」

 

 私の言葉に促されて殿下が自身の両手の行方を見ると、胸やお尻を思い切り触っている事に気付いた殿下は一瞬固まってしまう。そして思い切りその手を振り払い、私から顔を背けるようにして反対の方に向いてしまったのだった。

 

 「す、す、すまない…………そもそも君が早く癒しの魔法をかけないからっ」

 触られたのは私のはずなのに私以上に動揺しているのは殿下の方だった。首まで真っ赤にしながら…………あの超堅物で常に無表情の氷のようなシグムント殿下が動揺している……。

 

 私は途端に彼が可愛く思えて、クスリと笑ってしまうのだった。

 

 「な、何がおかしいっ!」

 「ふ、ふふっ……だって殿下、ワザとじゃないのにそんなに動揺して……あははっ」

 

 この世界に来て何がなんだか分からずに混乱していたけれど、シグムント殿下の動揺する姿を見たら、何故だか不思議と気持ちが落ち着いてきてしまった。

 殿下が手を取って立たせてくれたので、無性に感謝の気持ちを伝えたくなって「ありがとうございます」とお礼を述べてみる。

 するとまたしても照れながら「無礼を働いてしまったからな」とブツブツ言い、私の手を取ったままベッドまで連れて行ってくれたのだった。

 犬猿の仲だと思っていた2人だけど、もしかしたら何とか仲良くできそう?

 

 「また倒れられても困る。ロヴェーヌ先生には生徒が待っているので、早く復帰してもらわなくてはならない」

 殿下にそう言われて、私は再び現実に戻されていった。

 そうだった……クラウディアは魔法学園の先生で、回復したら先生として復帰しなくてはならない。まだ魔法もろくに使いこなせないのに――――

 

 「そう、ですわね。生徒が待っていますものね、早く回復するように頑張ります」

 ひとまず笑顔でそう答えておこう。なんだか口調まで補正がかかっているのか、普段は使わないお嬢様口調になってしまっているのが気になるけども。

 殿下は目を合わせてはくれなかったけれど、ベッドの掛け布団を優しくかけてくれる。

 「今日はもう帰る。まずはゆっくり休むんだ、体力が回復するまでは休むといい」

 ぶっきらぼうに、でも気遣う言葉を残して去っていったのだった。

 さすがに病人には優しいのかな?

 ゲーム内の2人を知っているだけに思いの外シグムント殿下に優しくしてもらえた私はホッとして、セリーヌにも「もう少しお休みくださいませ」と釘をさされたので、ちょっとだけ眠る事にした。

 さっきは殿下に恥ずかしい部分を触られたけれど、転生したばかりだからか、いまいち自分の体という自覚がなくて……その現実味の無さが余計に転生してしまったんだと感じさせてくる。

 この頭痛も癒しの魔法を使えば早いのだろうけど、まだやり方が分からないし、とにかく色々なことが突然過ぎて精神的な疲れがあるから眠くてたまらない。

 スポーツで疲れた時もとにかく寝るのが一番だものね。

 そう言い聞かせてふかふかの布団の中に潜り込んでいくと、あっという間に深い眠りに落ちていったのだった。

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